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2024年4月よりWebアクセシビリティへの対応が義務化?あなたのサイトは大丈夫?(追記あり)

2023.08.07 CATEGORY:WEBアクセシビリティ、フロントエンド、デザイン

2024年4月よりWebアクセシビリティへの対応が義務化?あなたのサイトは大丈夫?(追記あり)

お久しぶりです。フロントエンド研究室の小川です。

今回は、令和6年4月1日より改正される障害者差別解消法が
Webサイト制作にどのように影響があるのか、
私なりに調査いたしましたので、
新しくWebサイトを制作、またはリニューアルを予定されている方へ
少しでも参考になりましたら幸いです。

 

 

障害者差別解消法の改正とは?

障害者差別解消法とは、2013年6月に公布され、障害のある方もない方も、お互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会を実現することを目的として制定された法律です。

その法律が、2024年4月1日より改正され、行政機関等にのみ義務化されていた「合理的配慮の提供」が、民間事業者にも義務化されることになりました。  

  行政機関等 事業者
不当な差別的取扱いの禁止 してはいけない(義務)
第7条第1項
してはいけない(義務)
第7条第1項
合理的配慮の提供 しなければならない(義務)
第7条第2項
するように努力(努力義務)
→ 令和6年4月1日から義務
※第8条第2項
環境の整備 するように努力(努力義務)
第5条
するように努力(努力義務)
第5条

(2024-02-01 追記)※WEBアクセシビリティは合理的配慮の事前的改善措置にあたる「環境の整備」に分類されます

「合理的配慮の提供」とは?

「合理的配慮」とは、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに負担が重すぎない範囲(=「過重な負担※1」のない範囲)で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること※2)が求められるものです。「過重な負担」があるときでも、障害のある人に、なぜ「過重な負担」があるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話合い、理解を得るよう努めることが大切です。

※1「過重な負担」の判断は、具体的場面や状況に応じて、以下の要素等を考慮し、総合的・客観的に判断することが必要です。
・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうかか)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事務・事業規模財政・財務状況

※2 令和3年6月公布の改正法により、事業者による合理的配慮の提供が義務化されることとなっています(施行日:公布の日(R3.6.4)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)。改正法の詳細については以下を参照してください。
〇「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要」 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要(31.4KB)(内閣府のホームページへリンク)

罰則について
障害者差別解消法では、合理的配慮を提供しないことによる罰則はありません。

ただし、
「第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置」に下記のような規定があります。
 

(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)


第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

そして、この規定について下記のような罰則があります。

第六章 罰則


第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。


上記から分かるのは、合理的配慮を提供しないことによる罰則はありませんが、
合理的配慮の不提供があった際に、その事業者は報告をする必要があり、この報告を怠ったり、虚偽の報告をしたことによる罰則となっています。
ただし、管轄省庁からの指導・勧告や罰則の前に、その対応についての企業姿勢への世論など社会的制裁がありうることは念頭に置いておきましょう。

WEBアクセシビリティとは?誰でも使いやすいサイトを作ろう!

ウェブアクセシビリティの最初の規格は、W3C(World Wide Web Consortium)の「WCAG 1.0」(Web Content Accessibility Guidelines 1.0)で、1999年にW3C勧告となっています。
日本では、2004年に「WCAG 1.0」をベースにしたJIS X 8341-3が制定され(WCAG1.0と同じ内容ではない)、2008年には「WCAG 2.0」がW3C勧告となり、2010年にWCG2.0を包括した、JIS X 8341-3:2010が制定されました。

そして、2012年「WCAG 2.0」 がそのまま国際規格「ISO/IEC 40500:2012」になったことを受けて、日本でも「WCAG 2.0」と一致するように改正された、JIS X 8341-3:2016が制定されました。

2023年現在、W3CではWCAG 2.0を拡張した、「WCAG 2.1」が勧告されており、日本でも最新「WCAG 2.1」を使用することが推奨されています。

この国際規定である、JIS X 8341-3:2016を正しく理解し、適切に運用することが、障害者差別解消法における「合理的配慮の提供」につながり、
Webサイトを誰でも使いやすいサイトにすることにつながります。
 

JIS X 8341-3:2016の適合レベルについて

JIS X 8341-3:2016にはレベルA、レベルAA、レベルAAAの3つの適合レベルが定められており、各レベルの各項目に沿って実装・試験を行う必要があります。                         

達成等級 項目数 主な達成基準 備考
A 25 非テキストコンテンツの達成基準・音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準・キャプション(収録済み)の達成基準 など Webアクセシビリティにおいての基本的な事項。
AA 13 キャプション(ライブ)の達成基準・音声解説(収録済み)の達成基準・コントラスト(最低限レベル)の達成基準 など レベルAよりも細かい部分のアクセシビリティ事項。一般的にAAの達成が求められている(国内/海外ともに)
AAA 23 コントラスト(高度レベル)の達成基準・小さな背景音,又は背景音なしの達成基準・視覚的提示の達成基準 など 特殊な状況でのアクセシビリティ事項。一般的にAAA準拠を目指すことは推奨されていない。

参考:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0​
参考:JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリストの例)

WEBアクセシビリティを向上させるメリットとは?

1. すべての利用者に使いやすいサイトになる
JIS X 8341-3:2016のAAに準拠することにより、障害の有無・年齢・利用環境を問わず情報の閲覧でき、多くの利用者にとって使いやすいWebサイトとなります。

2. SEO対策
Webアクセシビリティ対応は、利用者だけでなくマシンリーダブル(機械が読みやすくする)にも有益です。適切なソースコードで書かれたWebサイトは全ブラウザで正しく表示されやすく、検索エンジン最適化(SEO)にも寄与します。これは利用しやすいWebサイトを作るための重要なマーケティング戦略の一つとなります。

3. 訴訟対策
全盲のファンが2019年に海外の女性歌手のWebサイトがアクセシブルでないとして訴訟を起こしました。この問題は以前から存在し、すべてのWebサイトで同様のことが起こりえます。日本企業もグローバル展開する場合は注意が必要であり、このような問題を防ぐためにも、すべての利用者がアクセス可能な使いやすいWebサイトにすることが大切です。

4. インバウンド対策
外国人の就労者や旅行客も日本企業のWebサイトを閲覧しています。
日本語表記は多様で読みにくいため、画像に書かれた日本語の意味を調べる際には、代替テキスト情報を画像に追加することが重要です。Webアクセシビリティは高齢者や障がい者だけでなく、言語が異なる人にとっても利便性を高めるための大切な規格です。企業は多言語対応やアクセシビリティへの配慮を通じて、より広範な利用者に安心感と信頼を提供できるでしょう。

5. 国際規格に沿うことによる安心と信用
「JIS X 8341-3」は「ISO/IEC 40500」と同等のWebアクセシビリティの国際規格です。この規格に準拠したウェブサイトは、利用者にとって見やすくアクセスしやすく信頼性が高まります。規格遵守により、企業は安心感と信用を築ける世界標準のサイトを提供できます。

WEBアクセシビリティを向上させるポイント!


これまで説明してきました通り、JIS X 8341-3:2016のAA準拠に対応することがWEBアクセシビリティを向上させるためには必要です。
ただしAA準拠を達成するためには、最新のWCAGに従ってデザイン・実装・試験を行う必要があり、
それには、多くの開発時間とコストがかかります。

そこで、まず最優先として対応をおすすめしたいのは、
WAIC(Webアクセシビリティ基盤委員会)で定められている、対応レベル3つの中で「配慮」を目指す対応です。

表記 ウェブアクセシビリティ方針の提示又は公開 目標とする適合レベルの達成基準の試験結果 追加で表記が必要な事項
準拠 必須 試験を実施し、達成基準を全て満たしていることを確認した上で、試験結果を公開する なし
一部準拠 必須 試験を実施し、達成基準の一部を満たしていることを確認する。試験結果の公開は任意 今後の対応方針、部分適合を適用する場合は、その記述
配慮 必須 試験の実施の有無、結果は問わない 目標とした適合レベル又は参照した達成基準一覧

「配慮」では、ウェブアクセシビリティ試験を実施する必要はなく、最新のWCAGに従ってデザイン・実装を行えば、
達成できますので、3つの中では比較的容易に対応可能です。

その他にも、デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」に記載されている、
「必須」対応項目に絞って一部準拠を目指し、その後AA準拠を目指すという方法もあります。

アビリブでは、ご希望やお悩みに寄り添った、最適な対応をご提案させていただきます。

最後に

もちろん弊社では、「準拠」に対応した事例もございますので、
ウェブアクセシビリティに関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。